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シルエクの未公開シーン集(10)

これは、長編連載『Silhouette Extra Tale』(通称シルエク)の
リメイク発表にあわせて作った、本編の舞台裏に隠された
未公開シーンやNGシーン集の第10編です。

本作を見ていないと分からないネタだと思いますので、
記事を読む際は、ご注意願います。


『彼女のいない世界』(シルエク:BADエンディング)

※(これは、シルエクのエンディングにおける一つの可能性で、
  女神様が『送還』の魔法を使用し、シシト、セト、リセットの
  3人が全て消滅してしまった後のエピソードです)


It's my dream... God knows story...










……。





「……」


アクアフロートに引っ越してきて、最初の冬休み……。
街中が白と赤とで彩られ、すっかりクリスマスの季節になっていた……。
けど、ここには白と黒しかない……。
明るい街の中とは対照的な、街外れの墓地……。


「冬休みの初日が墓参りなんてな……」
「しかし、そもそも提案したのはお前だろう、リョウヘイ」
「まあな……できるだけ、みんなで早くに来たかったし……」
「……」


手を合わせる私の横で、二人の男の子が話をしてる。
リョウヘイ君とアルバートさん……私の友達。
別々の学校に通う私たちだけど、今日は3人で一緒に出かけることにしたんだ。
この冷たい石の下に眠ってる、共通の友達に会いに来るため……。





"村上シシト 享年17歳"





「シシト君……」
「大丈夫か、冬村さん?」
「あっ、うん……ありがとう……」
「無理するなよ、二人とも。付き合いの短い俺はともかく、
 お前たちには相当こたえてるはずだろう」
「まあな、実際、すげー複雑さ……。
 冬村さんがいる前で言うのも悪いんだけど、
 ホント、サエちゃん恨むぜ……」
「まさか、心不全とはな……」
「……そうだね」
「あっ、その……気を悪くしないでくれよな」
「うん、ありがとう、リョウヘイ君……」


1ヶ月くらい前……シシト君が、自宅のベッドで
亡くなってるのが家族によって発見された。
死因は心不全……シシト君に移植された姉さんの心臓が
突然拒絶反応を起こしたのが原因だった。
それもあってかな……シシト君の家族も、リョウヘイ君たちも、
私に対してはすっごく気を遣って優しくしてくれるの。

でも……。


(みんな知らないんだよね……)


シシト君が、ホントは意識体が消滅して亡くなったってこと……。


「……さて、んじゃ、そろそろ行くか」
「もういいのか?」
「ああ、こんなに寒い中ずっといたら風邪ひいちまうしな。
 シシトだったら、きっと早く帰れって言うぜ」
「ふむ、そうか……」
「そういうワケで、冬村さんも……」
「……」
「……冬村さん?」
「あっ、うん、行くんだよ……ね?」
「まあ、もう回るとこは全部回ったからな……。
 サエちゃんとこも、シシトのとこも……」
「それとも、他に何かあるのか?」
「う、ううん……大丈夫」
「うっし、じゃあ戻るとするか。またな、シシト……」
「次に来るときは、ネコミミ女を捕まえた報告を持ってきてやろう」
「いや、もういいだろ、それ……」


スタスタ……


「……そうだよね。もう回るところなんてない……。
 "あの子"のお墓はどこにもないんだから……」


スタスタ……










あの日、一人の女の子がこの世界から消えた……。

あの子の存在が、どこか知らない場所へと消えた……。

あの子に関するみんなの記憶が、女神様の力で消えた……。

あの子に関わる全ての感情が、みんなの心の中から消えた……。



誰も知らない……消えたことさえ消えてしまった……。

私だけが知ってる……消えてしまった、あの子のことを……。

消してしまいたくなかったの……消えるべき存在だったしても……。










……。





「……」


無言で駅までの道のりを歩く私たち。
私の前を、リョウヘイ君とアルバートさんが並んで歩いてる。
ピシッと背筋を伸ばして歩くアルバート君は、ホントに背が高くて。
少し背中を丸めて歩くリョウヘイ君は、なんだか、とっても小さく見えた。


タッタッタ……


「あらっ?」


そんな時、目の前の曲がり角から制服を来た子ども達が
ゾロゾロと歩いてくる光景が目に入って、私は思わず声を上げた。


「……七影中学の生徒だな、ありゃ」


それを見て、リョウヘイ君がふと漏らす。


「お前たちの通ってた中学校か」
「あっ、そっか……姉さんの持ってた制服と同じだ」
「どうやら、まだ休みには入ってないようだな」
「……」


リョウヘイ君は、立ち止まったまま何もしゃべろうとしなかった。
姉さんやシシト君と通った日のことを思い出してるのかな。
……あの子のことは、何も覚えてないんだもんね。


「……」


リョウヘイ君に目を向けてたアルバートさんも、
同じ方向を向いたまま黙り込んでしまった。


(二人とも……)





スタスタ……





「……えっ?」


下校していく生徒の中、一人で歩いてる男の子……。
二人が黙り込んでしまったホントの理由は……。


「ウ、ウソ……あれって……」
「……よく似ているな、アイツに」
「……ははっ」


ようやく口を開いたリョウヘイ君を振り返ってみる。
口元が緩んで、ちょっと目が潤んでた……。


「リョウヘイ君……」
「リョウヘイ……」










「せんぱ~い」

「……っ!?」


エッ……


「んっ、なんだ?」
「どうやら、奴の知り合いみたいだな」

「あー、○○か……」
「○○か……じゃないでしょ! 一緒に帰るって言ったじゃん!」
「いきなり先輩にタメ口ですかい……」


ダレ……アノ子……


「あっ、そうそう……はい、コレ」
「えっ、何、コレ?」
「プレゼントだよ。もうすぐクリスマスだから前祝い」
「前祝いって……ちょ、なんかありえない値札がついてるんだけど!?」
「あっ、剥がし忘れちゃった……エヘッ」
「エヘッ、じゃなくてさ、こんな高価なの受け取れるワケないよ!」
「いいよ別に、パパもママもお小遣い好きに使えって言ってるんだし……」
「その辺、もう少し勉強した方がいいと思うよ……」
「何よそれ! 私がテストで赤点とったこと遠回しにバカにしてるの!?」
「してませんっ!!」

「見たところ、どこかの令嬢みたいだな」
「でも、なんか頭ワルそうだぜ……」


全然……似テナイ……


「ってかさ、もう少し自粛した方がよくない?
 ファンクラブの子とかいっぱいいるの知ってるでしょ?」

「いいのいいの、向こうが好きでやってるんだし。私は私の好きにするもん」
「いや、でも……そうされると僕の身の安全がねぇ……」
「分かった! じゃあクリスマスプレゼントはボディーガードねっ!」
「なんでそうなるのさぁぁー!!」

「しかし、あの男子学生……ホントにシシトそっくりだな」
「全くだ、お前生きてたのかってツッコミたくなるぜ……」
「で、でも……あっちの子は……」
「なんにせよ、アイツには幸せに生きてもらいたいものだな」
「そうだな、確かにシシトとそっくりかもしれねぇけど、
 シシトには、そういう子いなかったからな……。
 あんなに慕ってくれてる後輩、世界中探してもいないぜ」
「────ッ!!」





ドコニモ……イナカッタ……





「……えっ?」
「むっ?」
「お、おい、冬村さん!? どうしたんだよ、いきなり泣き出して!?」
「ぐすっ……ひっく……」
「い、いや、その……泣きたい気持ちは分かるけどさ……」
「ち……ちが……ぐすっ……」
「えっ? なんだって?」
「ひっく……違う……違うの……」
「ち、違うって……?」
「……しばらく、そっとしといてやろう」
「ぐすっ……ぐすっ……」










私の見てた現実は……夢だったのかもしれない……。

消えたんじゃなくて……初めから存在なんてしなかった……。

世界にあふれる現実が……私の夢を否定してしまった気がした……。



でも……これは私が自分で選んだ世界……。

彼女のいない現実の中で……私は夢を見続ける……。

私が大人になって恋をして……結婚して子どもが生まれて……。

いつかこの世界を離れるときが来るまで……ずっと覚えておくから……。

だからね……今だけ言わせて……。



さようなら……犬山さん……。

また……どこかで会いましょう……。


関連項目 ≫ 『Silhouette Extra Tale』シリーズ関連の保管庫
 
 

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